交通事故でむちうちとなった場合の注意点
むちうちの症状
1 むちうちとは
むちうちとは、一般的に、骨折や脱臼を伴わず、頚部脊柱を支える靭帯や筋肉等を損傷した状態をいいます。
むちうちは、正式な病名ではなく、診断書には、通常、「頚椎捻挫」、「外傷性頚部症候群」等と記載されます。
2 むちうちの症状
むちうちの症状は、頚部通、頭痛、めまい、四肢等のしびれ、耳鳴り、吐き気等、実に多様です。
しかし、交通事故による負傷の程度としては比較的軽微なものとされ、骨折や脱臼を伴わないため、レントゲン写真、MRI画像等による他覚的所見がみられないケースがほとんどです。
そうすると、症状の有無、内容、程度を知るためには、被害者の自覚症状に依らざるを得ません。
交通事故の被害者がむちうちと診断された場合、自覚症状しかないことから、症状が残っているにもかかわらず、保険会社から治療の終了を迫られる等の問題点が生じがちです。
接骨院における施術の可否
むちうちの主な治療方法は、薬物治療、炎症等を鎮めて疼痛を緩和するための物理療法が一般的です。
そのため、整形外科ではなく接骨院でリハビリを受けることを希望する被害者が多くみられます。
接骨院でのリハビリ(施術)は,柔道整復師という資格を有する専門家によって行われるため,必要かつ相当な範囲の施術費について,加害者側に損害賠償請求することが可能です。
しかし、加害者側の保険会社が、「接骨院に行くべきでない」、「通院期間は2か月までです」、「部位数が多すぎます」等と言って、接骨院への通院に反対したり、施術費の支払いを拒むケースがみられます。
この場合、保険会社が支払いを拒む正当な理由があるのかを確認し、支払いを可能とするためには何をすればよいのか、支払いを拒まれた場合に今後の治療をどうすべきか等について検討しなければなりません。
むちうちの症状固定日
症状固定とは、一通りの治療が行われたにもかかわらず、これ以上改善が望めない状態をいいます。
自覚症状しかないむちうち案件では、外から怪我の具合が認識できないため、通常、事故から数か月程たつと、症状固定を理由として治療費の支払いを打ち切られます。
しかし、症状固定の判断は、事故状況、症状や治療の経過等によって事件ごとに異なりますから、個別の事情を精査しなければなりません。
むちうちの後遺障害
むちうちによる痛みや痺れは,後遺障害等級の14級9号「局部に神経症状を残すもの」または12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。
加害者の保険会社は、治療費の支払いを打ち切るにあたって、残っている症状について後遺障害の申請をするようもちかけることがあります。
しかし、早期に治療を終了して、後遺障害の申請をしても、他覚的所見のないむち打ち症状について後遺障害と認定される可能性は高くはありません。
そこで、後遺障害の申請時期、後遺障害を申請した後の通院治療等について検討して、適切な時期に適切なと方法で申請しなければなりません。