弁護士が交渉すると慰謝料が上がる理由
慰謝料とは
慰謝料とは,精神的損害に対する損害賠償のことです。
交通事故の被害者は,加害者に対し,事故によって被った損害について,賠償請求することができます(民法709条)。
民法710条は,「他人の身体,自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず,前条の規定により損害賠償の責任を負う者は,財産以外の損害に対しても,その賠償をしなければならない。」と定めています。
この「財産以外の損害」の典型例が,精神的損害である慰謝料です。
慰謝料を計算する基準
交通事故の被害者は,通常,入通院治療が終了したり,後遺障害等級が認定されると,加害者側の保険会社から損害賠償額の提示を受けます。
損害賠償額には慰謝料の提示も含まれますが,慰謝料を計算する基準は,①自賠責基準,②任意保険会社基準,③裁判基準があるといわれています。
①自賠責基準は,自動車損害賠償補償法に基づいて定められた基準です。
②任意保険会社基準は,加害者側の任意保険会社が用いる内部基準のことです。任意保険会社は,独自の内部基準に基づいて慰謝料を算定して,被害者の方に提示します。
③裁判基準とは,交通事故事件を扱う裁判実務において参照されている赤い本等の基準のことです。
赤い本とは
赤い本とは,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という書籍の略称です。
表紙が赤いことから,「赤い本」と呼ばれています。
上巻の基準編と下巻の講演録編とがセットとなっており,毎年2月に改訂版が発行されています。
赤い本は,東京地方裁判所における裁判実務に基づき,治療費,交通費,休業損害,後遺症・死亡による逸失利益,傷害・後遺症・死亡による慰謝料,物損等,損害項目ごとに算定基準を解説しています。
東京地方裁判所及びその周辺の裁判所では,通常,赤い本の算定基準を用いて計算がなされています。
弁護士が交渉すると慰謝料が上がる理由
慰謝料の金額は,通常,①自賠責基準<②任意保険会社基準<③裁判基準,の順で高くなります。
特に,事故による負傷の程度が大きいほど,①・②・③の差は顕著となります。
弁護士は,裁判所基準を用いて慰謝料を算定します。
保険会社は,裁判になれば裁判基準が用いられること,弁護士は裁判基準で算定することを知っています。
そのため,弁護士が示談交渉する場合,保険会社も裁判基準を考慮して交渉に応じ,当初の慰謝料の提示額より増額し得ることが多いです。