山形の交通事故の裁判例解説
平成18年11月24日 山形地方裁判所米沢支部 判決
【要旨】
飲酒運転によって歩行者Vを死亡させた交通事故において,加害車両の同乗者にも運転者と同じ損害賠償金責任を認められた裁判例。
【事案】
Y1,Y2,Y3の3名が,Y3の自宅で一緒に飲酒した後,Y1の運転する車でZ飲食店に向かう途中,無灯火,赤信号無視,速度超過でVをはねて死亡させた。
Vの両親であるX1・X2が,Y1に対して不法行為による損害賠償を請求するとともに,同乗者であるY2とY3に対して飲酒運転及び危険運転行為の教唆者又は幇助者として損害賠償を請求した。
【判決(抜粋)】
Y2及びY3は,既に知人宅で飲酒してきたY1と(中略)Z飲食店に向かうまでY1宅で2時間近く共に飲酒していたこと,(中略)空腹を満たすためにZ飲食店に行くことになり,Y1が加害車両を飲酒運転してZ飲食店に向かったが,Y2及びY3は,Y1が相当量の飲酒をしていることを認識しうる状況にありながら,Y1の飲酒運転を制止するどころかこれに同乗していたこと,そして,Y1が,警察による飲酒運転の発覚を恐れ,制限速度を時速40キロメートルも超過する速度で走行し,かつ,赤信号を無視するという危険運転行為をしたことにより本件事故を惹起しており,Y1がこのような行為に及んだのは飲酒による判断応力の低下に起因するところが大きいといわなければならないが,こうした事態になり得ることについてもY2及びY3において予見可能であったといえることに鑑みれば,Y2及びY3は,Y1の飲酒運転及び危険運転行為を幇助した者として民法719条2項に基づく責任を負うというべきである。
平成27年12月22日山形地方裁判所判決
【要旨】
酒気帯び状態のYが運転する車に同乗していたVの過失割合を60%とした裁判例。
【事案】
Yは,酒気を帯びた状態でVの所有車を運転し,時速約90キロメートルの高速度で走行させ,カーブに沿って進行させることができず,Vの所有車を道路脇の電柱等に衝突させ,Vの所有車に同乗していたVを死亡させた。
Vの相続人であるXが,Yに損害賠償を請求した。
【判決】
Vは,Yとともに地元消防団の本件忘年会に参加して,6時間以上にわたって飲酒をしていたところ,本件事故当時も一定の判断能力を有していたことがうかがわれ,Yが飲酒していることを認識していたといえる。そして,(中略)本件事故の発生に至る経緯は不明であるものの,本件車両の所有者であったVは,本件車両の運行を支配していた者であり,事故防止につき中心的な責任を負っていたのであって,本件事故についての過失は相当に大きいものといわざるを得ない。また,(中略)Vは,本件事故当時,シートベルトを着用していなかったところ,仮にシートベルトを着用していたとすれば,死亡という重大な結果を避けられた可能性は十分に考えられる。もっとも,本件事故当時,シートベルトを着用していなかったのはYも同様ではあるが,そのことを踏まえても,Vがシートベルトを着用していなかったことについては,Vの落ち度として考慮せざるを得ない。
その一方で,Yも,前記(中略)の各過失により本件事故を発生させたものであるところ,この過失の態様は悪質であるといわざるを得ず,Vが死亡し,Y自身も大けがをおうほどの重大な事故であることを踏まえると,Yにも相応の責任があるものと見るのが相当であって,これらの事情を総合的に勘案すると,本件事故及びVの死亡結果の発生については,Vには60パーセントの責任があるものとするのが相当である。